はじめに
ある時は一関市大東町で、ある時は一関市川崎町で、またある時は一関市花泉・・・そして今回の一関市関が丘のM様宅のクロマツの剪定、・・・と高齢の庭師さんが作業できなくなった後の依頼が続きます。
「高齢の庭師さんが来れなくなって」・・・と、何とか2年がかりで捕まえたのが私(松専門の庭師)だと言います。ネットにこのサイトを載せているだけなので、若い方には頼まれますが、あまりネットを使わないご高齢の依頼したい方には目に止まりにくいかもしれませんね。
これだけ頻繁に「高齢のため作業ができなくなったので・・・」と依頼されるところを見ると、今まで高齢の庭師さん(たぶん個人)ってどれだけいるんだろうと思いたくなります。
大きな業者さんだと毎年決まったお得意様がいるので、剪定時期はほぼ捕まらないと言います。もちろん私も同じです。今回の場合にも1年先の契約でもいいというので依頼を引き受けました。
今回のご依頼|2年間放置された門かぶり黒松との出会い
■高齢の庭師さんに代わって
M様は長年、近所に住む高齢の庭師さんに松の剪定をお願いしていました。ところがその庭師さんが体調を崩し、三脚に上ることができなくなってしまったそうです。そこから2年間、M様のお庭の門かぶり黒松は手つかずのまま過ごすことになりました。
「誰に頼めばいいのか分からない」「今さら新しい人にお願いするのも気が引ける」というお気持ちがあったそうで、知り合いに相談しながら2年かけてようやく私にたどり着いたとお話しくださいました。あちこちの業者さんにも頼んだらしいですがことごとく断られたようです。こうした話は一関市内のあちこちでよく耳にします。
■一関市内を飛び回る松専門庭師
私は大東町、川崎町、花泉と一関市内を飛び回りながら松の剪定を専門にしています。大きな造園会社のように毎年決まったお客様だけを回るのではなく、こうして困っている方のところへ直接伺うスタイルです。1年先の契約でも構わないというM様の悩ましい言葉に背中を押され、今回の大事なクロマツの剪定をお引き受けすることになりました。
剪定作業前の基本の安全チェック
まず剪定における危険性からチェックです。
高さは下の道路からだと4.5m。実際の樹高はというと3.0mくらいかな。三脚脚立の12尺(3.6m)でギリギリたりるくらいの高さですね。

■三脚のかけ方と足元の安全対策
三脚の立て方にも工夫が必要なようです。道路がコンクリートでツルツル、しかも急傾斜なので超危険な現場と察知しました。昔、三脚の上部に昇っていてそのまま滑って行った経験があります。
なので、三脚の脚下にはゴムマットを引きます。そしてできるだけ松に固定できるようにしてグラつきと滑りをなくします。あとは自分が落ちないようにするだけです。(落ちたことはないですが油断はできないです)
■ハチ対策は妥協しない
そして忘れていけないのはハチの状況です。刺されたらその日の作業に差し支えるので慎重に行ないます。25年間で2回刺されていますが、いずれも大丈夫だろうと思った気を抜いた時です。スズメバチ、アシナガバチ等は必ずいるものだと思って手入れ作業に入らないといけません。怖いものは怖いのですから。
ほうきとハチスプレーを持って現場を一周してハチの存在を確認します。ヨシとなればシートを引いて三脚を立てかけて作業にかかります。
それだけで作業前にだいぶ時間がかかりますので、特に夏場の作業は暑くてだるくなるので早めに家を出て涼しいうちにスタートするようにしています。
何事も安全第一です。
2年放置された松でも元に戻せる3つの理由
「もう2年も放置してしまったので、うちの松はもう手遅れではないか」というご相談を、M様と同じようによく受けます。ですが、結論から言うと2年程度の放置であれば、ほとんどの黒松は元に戻せます。その理由を3つに分けてお話しします。
■理由1:黒松は生命力が強く芽吹く力がある
黒松は「男松(おまつ)」とも呼ばれるほど力強い木です。多少枝が伸びすぎても、幹や太い枝に養分をため込む力があるため、数年剪定を休んでも枯れてしまうことはめったにありません。今回のM様宅の松も、2年間手入れがなかったにもかかわらず、幹や枝はしっかりと元気な状態を保っていました。
■理由2:一気に整えず数年計画で直す
放置された松を見ると「早く元通りにしなければ」と焦ってしまう方が多いのですが、これは逆効果です。伸びすぎた枝を1回でバッサリ切り詰めてしまうと、松は急激な変化に耐えられず、樹勢(木の元気さ)を大きく落としてしまうことがあります。今回も1年目は枯れ枝や苔の除去、軽い透かし程度にとどめ、2年目、3年目と少しずつ枝の間隔を空けていく計画にしました。
■理由3:全葉むしり剪定で樹勢を整えられる
今回のように6月中旬の時期であれば、古い葉を手でむしり取る「全葉むしりの剪定」と次の新芽だけを残す剪定を行うことで、1回の作業でも樹勢をしっかり整えることができます。新芽を折らないよう神経を使う作業ですが、この方法なら年に何度も手を入れなくても、松の状態を大きく改善できます。
門かぶり黒松(剪定作業前)
さて、本題の門かぶり黒松の剪定作業です。作業前のクロマツの状況をご確認ください。枝が四方に伸び、葉も密集して、2年分の伸びがしっかりと積み重なっているのが分かります。




門かぶり黒松(剪定作業中)
道路が急傾斜でツルツル滑るため、今回は2台の三脚を使って足場を安定させながら作業を進めました。枝にしっかり体を固定し、少しずつ確実に手を入れていきます。



門かぶり黒松(剪定作業後)
今回の剪定時期は、6月中旬です。この時期の剪定は、樹勢の状況を見て主に「全葉むしりの剪定」しております。これだと1年で1回で作業が済みます。
しかし、普通の剪定よりも面倒ですし、新芽を折る危険があるので全集中して手入れに臨みます。
その結果が、これです。







■なぜ全葉むしり剪定を選んだのか
2年放置された松は、内側の古い葉が密集しすぎて風や日光が通りにくくなっています。これを放っておくと病害虫のすみかになったり、枝が枯れ込んだりする原因になります。手でむしり取る全葉むしり剪定なら、はさみでは難しい細かな古い葉まで丁寧に取り除けるので、松全体の風通しと日当たりを一気に改善できます。
■枯れ枝と苔の除去がカギ
1年目なので様子を見るために、枯れ枝はもちろん取り除きます。それと新芽に影響の出て樹勢に良くない苔をゴッソリ取り除き、枝の間隔は空けず透かさずに軽く済ませました。苔は見た目には風情があるように見えますが、新芽を覆うと成長が滞り枯れますし、樹皮の呼吸も妨げてしまうため、放置された松ほどしっかり取り除く必要があります。
門かぶり黒松(剪定3ヶ月後)
6月の剪定作業を終えた3ヶ月後の9月に様子を見に行きました。剪定直後は葉が少なく寂しい印象を受けることもありますが、3ヶ月経つとしっかり緑が戻り、木全体に落ち着きが出てきているのが分かります。



門かぶり黒松(剪定12ヶ月後)
1年後にはどうなっているのかというと、6月にこのくらい新芽が伸びています。
これを枝の間隔を少しずつ透くようにしてだんだんと空けたり、ひと塊の樹形を小さくしていく作業を数年間で行なっていきます。樹勢を考えて決して一気に作業は行いません。



■樹形を整えるのは数年がかり
12ヶ月後の写真を見ていただくと分かるように、新芽がしっかりと元気に伸びています。ここで焦って一気に枝を減らしたくなるところですが、来年、再来年と少しずつ枝を透かして門かぶりらしい優雅な樹形へ近づけていきます。M様のお庭の松も、これから数年かけてじっくりと本来の姿を取り戻していく予定です。
放置された松を持つ方へのアドバイス
■まずは早めの相談が大切
「何年も放置してしまったから恥ずかしい」と感じて、相談自体をためらう方が少なくありません。ですが、放置期間が長くなるほど松への負担は少しずつ増えていきます。今回のM様のように2年程度であれば十分に元へ戻せますので、気になったタイミングで一度ご相談いただくことをおすすめします。
■毎年剪定できなくても大丈夫
高齢の庭師さんが来られなくなった、体力的に自分では手入れできなくなった、そうした事情はどのお宅にもあり得ることです。毎年きっちり剪定できなくても、数年に一度しっかり手を入れれば、黒松は十分に元気な姿を保てます。無理のないペースで、長く付き合っていける庭師を見つけていただければと思います。
まとめ
今回は一関市関が丘のM様宅で、2年間放置された門かぶり黒松の剪定を行いました。高齢の庭師さんに代わって私が手入れを引き継ぎ、6月中旬の全葉むしり剪定によって、枯れ枝と苔を取り除き、樹勢を整えることができました。
3ヶ月後、12ヶ月後の経過を見ても分かる通り、2年程度の放置であれば黒松はしっかりと回復してくれます。大切なのは一気に元通りにしようとせず、数年がかりで少しずつ樹形を整えていくことです。
一関市内で「うちの松も何年も手入れできていない」「頼んでいた庭師さんが高齢で来られなくなった」とお困りの方は、どうぞ気軽にご相談ください。今回のM様のように、時間をかけてでもしっかり元の姿へ戻していくお手伝いをいたします。