「クロマツ2本が枯れそう」と一関のS様から相談を受け、5月初旬に見に行ってみると・・・
何とこんな状態でした。
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2021/5/11撮影
これは「葉ふるい病」といい、ロフォデルミウム属菌という子嚢菌類により感染し、葉枯性の病害を引き起こしていました。
この病気は、なぜか岩手県に多いと言われています。
岩手県一関市の住宅街のマツを注意深く観察してみました。すると、確かに「病害をおこしているのでは?」と疑うような症状のマツが、調査した3割くらいのお宅で見つけました。
葉ふるい病の治療を行うとマツはどうなるか?
葉ふるい病菌に侵されているので、時期的には遅かったかもしれませんが、
殺菌剤を散布しました。
散布時期は5月中旬で、「キノンドー水和剤」という殺菌剤により防除等の治療を施しました。
倍率はキノンドーの袋の裏に書いておりますので参考にするとよいです。
散布等の治療後、6月に枯れ枝等の除去作業などの剪定を行ないました。
すると、何と7月下旬にはこんな状態に変わり果てていました。
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2021/7/29撮影
あんなに葉っぱが茶色に変色していたのに、濃い緑色に変わり、色つやがよく、ピッカピカになっていました。
もう一本のクロマツも同じような成果が出ており、
葉の色が濃い緑に変わって色つやがよく、ピッカピカになっていました。
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葉ふるい病の治療ですが、誤解されると困るのでお伝えしておきます。
・単純に散布しただけではこのような状態にはなりません。
・本来は適切な防除時期と散布回数などもあります。
・剪定方法にも季節によって適切な方法があります。
今回は剪定時期が良かったことが、良い成果につながったと感じております。
葉ふるい病菌はどのようにして被害が広がっていくか?
葉ふるい病菌は子嚢菌(しのうきん)類で、「子嚢胞子」が風によって飛散して被害が拡大していきます。
子嚢胞子は風が強いほど遠くに飛ばされる可能性は高くなるのですが、葉ふるい病菌は野外においては、降雨時に多く飛散し、無降雨時にはほとんど飛散しないという研究結果があるようです。
降雨時に多く飛散する理由は「子嚢胞子」が水を吸うことによって、子嚢(袋)の膨圧が高まり、限界が来ると「子嚢胞子」が外界にはじき出されるためと考えられているようです。
例えるなら、風船に水を入れながら膨らんだ時に外へ押し出す圧力がかかって、「もう満杯!限界!」という時に外にはじき出される感じです。
ただ、子嚢胞子は水を吸っているためか、あまり高くへは飛ばないようです。
葉ふるい病が起こる時期はいつか?
葉ふるい病の症状がおこる時期は、寒さと風が強くなる冬から春先に酷く現れるようです。
寒風の強く吹くところに植えているマツは気を付けて観察してみた方がよいです。
この葉ふるい病は、古い葉も新しい葉も関係なく、マツの葉の色が茶色く変色し枯れたようになり、この状態がひどくなると場合によっては枯れることもあります。
適切な時期に、適宜に防除を行なう事で、葉ふるい病を抑えることができるのですが、すんなり良くなることはまれなので、防除しながら観察しながら少し時間をかけて改善していくことを推奨します。